〒634-0804

奈良県橿原市内膳町1-1-19

セレーノビル2階

なら法律事務所

 

近鉄 大和八木駅 から

徒歩

 

☎ 0744-20-2335

 

業務時間

【平日】8:50~19:00

土曜9:00~12:00

 

むかしMattoの町があった ☆ あさもりのりひこ No.89

Mattoは狂人という意味のイタリア語。

Mattoの町」は精神病院のことです。

「むかしMattoの町があった」

ということは,今は「Mattoの町」がない,ということです。

現在,イタリアには精神病院がありません。

 

10月4日(土),奈良県社会福祉総合センターで映画「むかしMattoの町があった」を観てきました。

「むかしMattoの町があった」は,2009年に製作されたイタリアのテレビ映画で,上映時間3時間18分の長編です。

精神科医フランコ・バザーリアが,イタリア精神保健改革に尽くした1961年から1978年までを描いています。

 

バザーリアは,精神病の患者を病院から開放して,地域で暮らしながら治療すること,すなわち精神病院を解体することを主張しました。

バザーリアは,偏見,政治的圧力,マスコミと闘い,ときに挫折しながらも,精神保健改革の活動を続けました。

そして,1978年,イタリア中のマニコミオ(精神病院)を廃止する新しい精神保健法が成立しました。

その後,20年かかって,イタリアでは精神病院がなくなりました。

 

不屈の精神で偏見と闘うバザーリアの姿に感銘を受けました。

性的に自由奔放であることから,精神病院に入院させられた女性マルゲリータ,15年間鎖につながれたままの男性ボリスなど,個性的な患者が登場します。

「むかしMattoの町があった」を観ていると,精神病の患者が危険な狂人ではなく,過去に深い心の傷を受けた人々であることがわかります。

 

バザーリアの活動については,大熊一夫著「精神病院を捨てたイタリア,捨てない日本」(岩波書店)にわかりやすく書かれています。

 

映画「むかしMattoの町があった」の後半で,ボリスがバザーリアとつぎのような会話をするシーンがあります。

 

ボリス:先生よ,本当のことを言ってくれ

苦悩が人をMattoにするのか

Mattoであることが苦悩を感じさせるのか

 

バザーリア:それは,わからないよ

僕にも,ほんとに,わからないんだよ

 

 精神病院への入院が「治療」ではなくて「収容」であるという事実は,当時のイタリアも現在の日本も同じです。