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ミステリー映画の醍醐味は謎解きである。
最後に,あっと驚く種明かしがある。
この謎解き,種明かしが鮮やかであればあるほど,映画は面白くなる。
「殺しのドレス」「シックスセンス」「幻影師アイゼンハイム」「ユージュアルサスペクツ」などはこの手の名作である。
ところが,あっと驚く展開になるが,その謎解き,種明かしはしない映画もある。
たとえば「ある日どこかで」
主人公リチャードはタイムスリップする。
しかし,どういう理屈でタイムスリップできるのか?どうしたら現代にもどれるのか?はテーマではない。
その後のストーリーこそが主題である。
たとえば「転校生」
中学生の斎藤一夫と斎藤一美は,寺の階段を転げ落ちて,体と心が入れ替わってしまう。
ふたりはなぜ入れ替わったのか?どうやって元に戻るか?はテーマではない。
たとえば「時をかける少女」
主人公の芳山和子はテレポーテーションとタイムリープができるようになる。
しかし,なぜそんなことができるようになったのか?その能力を何に使うか?はテーマではない。
たとえば「さびしんぼう」
主人公ヒロキの前に,さびしんぼうであるタツコがあらわれる。タツコは何者なのか?タツコはどこからきたのか?はテーマではない。
「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」は大林宣彦監督の尾道3部作である。
尾道3部作に共通するのは,いずれも奇妙な出来事に主人公が巻き込まれるのであるが,彼らはその原因を追及したり,解決方法を探したりしない,ということである。
体と心が入れ替わってしまった,さて,どうしたら元に戻れるのだろう,と必死に解決策を探すことはしない。
テレポーテーションとタイムリープができるようになった,さて,この力を何に使おう,と悩んだりしない。
自宅にタツコというわけのわからない者が現れた,さて,その正体をつきとめよう,とはしないのである。
大林宣彦の作品の主人公たちは,置かれた状況の中でベストを尽くす。
心身の入れ替わりも超能力もメインテーマではない。
それらはあくまで装置のひとつにすぎない。
そのような状況の中で,彼らは,何を想い,何を感じるか。
大林宣彦が描いたのは「切なさ」である。
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