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トランス脂肪酸 ☆ あさもりのりひこ №135

山陽自動車道のサービスエリアで,「砕いたアーモンドを練り込んだバター」を買ったことがあった。

 丸いビンに入っていて,ちょっと高かったが,大変おいしかった。

 

 最近,仕事で山陽自動車道を走ったので,サービスエリアで「砕いたアーモンドを練り込んだバター」を探した。

 あった。

 ビンではなくプラスチックの容器に変わって,分量も少なくなっていたが,前に買った商品である。

 以前は,プレーンだけであったが,今回は,抹茶,きなこ,黒ごまと4種類売っている。

 4種類とも買って帰った。

 

 翌朝,早速,食パンに塗って食べることにした。

 冷蔵庫からプラスティック容器を出して,蓋に貼ってあるラベルを読むとつぎのように書いてある。

 

『この商品はマーガリンを使用しており、バターは一切使用しておりません。』

 

ガーン!そげな!

 

マーガリンには「トランス脂肪酸」が含まれている。

 「トランス脂肪酸は,主に水素添加という工業的な技術により,液状の油(植物油)を固形状(部分水素化油脂)に変える際に発生するものであり,マーガリンやショートニングなどの油脂食品,これらを用いた加工食品に多く含まれている。」(山田豊文:DAYS JAPAN2015年8月号)

 

 「トランス脂肪酸」は細胞の膜の強度(膜安定性)や膜の柔軟性(膜流動性)を阻害する。

 その結果,心臓病などの循環器系疾患,がん,糖尿病,加齢黄斑変性(眼疾患),男女両方の不妊,子宮内膜症,流産などのリスクが高まる。

 

 さらに,「トランス脂肪酸」は,うつ,アルツハイマー病,注意欠陥多動性障害(ADHD),攻撃性,記憶力低下などとの関連性も示されている。

 

 「脳の発達に極めて重要な胎児期から幼児期にかけて,妊婦や授産婦,そして子ども自身がトランス脂肪酸を取り込んでいては,もはや脳が正しく機能するとは考えられない。」(山田豊文:DAYS JAPAN2015年8月号)

 

 トランス脂肪酸が使われている食品は,マーガリン,ショートニンング,市販の食パン・菓子パン,クッキー,ビスケット,ドーナツ,シュークリーム,ロールケーキ,スナック菓子などなど。

 食品表示の原材料名に「マーガリン」「ショートニンング」「加工油脂」「ファットスプレッド」「植物油脂」などと書かれていれば,「トランス脂肪酸」を含む可能性が非常に高い。

 

世界各国の対応を見てみよう。

①トランス脂肪酸の含有量を規制している国と地域

 デンマーク,ニューヨーク市,カリフォルニア州,スイス

オーストリア,カナダ,シンガポール

②トランス脂肪酸含有量の表示を義務づけしている国と地域

 アメリカ,カナダ,韓国,中国,台湾,香港,アルゼンチン

 ウルグアイ,パラグアイ,ブラジル

③自主的な低減措置を実施している国と地域

 EU,イギリス,フランス,オーストラリア

ニュージーランド

 

2015年6月16日,アメリカの食品医薬品局(FDA)は,「トランス脂肪酸」を含む加工油脂の食品への使用を2018年6月までに全廃する,と発表した。

 

 日本の農林水産省は,健康への影響が明らかではないとして,何の対策も取っていない。

 含有量の表示すら義務づけられていない。

 

 健康への悪影響の危険があるときの日本の対応は

「有害物質を放置して野放しにする

危険が証明されていないから

有蓋物質を摂取して,人が死ぬ,病気になる

犠牲者が出てから有害物質を規制する」

 というものである。

 水俣病などの公害に対する対応も同じであった。

 原発事故による放射性物質による汚染についても同じである。

 

 しかし,健康への悪影響の危険があるときの対応としては

 「まず,有害物質を規制する

  人の健康を守るため

  危険がないことが証明される

  規制を緩和する」

  というのが正しい。

 

「トランス脂肪酸」は栄養素ではない。

「トランス脂肪酸」は有害物質である。

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コメント: 1
  • #1

    通りすがりの名無しさん (金曜日, 31 7月 2015 20:28)

    トランス脂肪酸の摂取量は食文化によって相違があり、含有食品からも明らかなように、欧米では多い傾向にあります。
    WHOは、1日当たりの総エネルギー摂取量の1パーセント未満と定めていますが、アメリカ人では平均2.6パーセントとなっています。一方日本人は0.44〜0.47パーセントとなっています。

    死亡原因においても、アメリカでは日本と異なり心疾患が1位で、これに対する取組みが必要とされている、という状況にあります。

    このように国によって事情が様々であるため、規制の仕方が異なっているのです。

    なお、日本でもトランス脂肪酸平均摂取量の調査は定期的に行われています。今後アメリカ並みの摂取量になれば相応の対策がなされるものと思われます。