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憲法のお話(後編) ☆ あさもりのりひこ No.262

2016年5月19日、奈良シニア大学で「憲法のお話~憲法の改正って必要?~」という題目で、1時間40分お話しをした。

前半は、日本国憲法はアメリカの押し付け憲法か、というお話。

後半は、日本国憲法の基本原理と憲法改正について話した。

日本国憲法の基本原理は、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重である。

憲法改正については、つぎのような話をした。

1 2012年(平成24年)4月27日、自由民主党が「日本国憲法改正草案」を決定した。

 7月10日に投票が行われる参議院通常選挙で、与党が議席の3分の2を占めると、この草案に沿って憲法が改正される。

 というわけで、自由民主党の「日本国憲法改正草案」のポイントを押さえておく。

2 制定主体

 現行憲法前文は「日本国民は・・・この憲法を確定する。」と記載されていて、憲法を制定する主体が「日本国民」であると明記されている。

 ところが、改正案は「日本国は・・・統治される。」と受動態で記載されていて、憲法を制定する主体が書かれていない。

 その時、その時の権力者が統治する、ということである。

3 戦争の放棄

 現行憲法9条2項は「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と戦争の放棄を明記している。

 これに対して、改正案は「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。」と規定し、9条の2で「国防軍」の保持を新設している。

 この「自衛権」には個別的自衛権だけではなくて集団的自衛権も含まれるというのが現政権の考えである。

これは「戦争をしたい」ということである。

4 公共の福祉

 現行憲法13条は「生命、自由及び幸福追求に対する権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と規定している。

 これに対して、改正案は「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」という統治者がその都度自己の都合にあわせて定義を変更できるものに縮減した。

 これは「民の健康や無事や安全」には配慮しない、ということを意味している。

5 表現の自由

 現行憲法21条は「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」と規定している。

 しかし、改正案では21条2項が新設されて、表現の自由も「公益及び公の秩序」という統治者がその都度自己の都合にあわせて定義を変更できるもので制限できることになる。

6 居住、移転、職業選択の自由

 現行憲法22条1項は「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と規定して、「居住、移転、職業選択の自由」も「公共の福祉」の制約に服するとしている。

 ところが、改正案は、「公共の福祉に反しない限り」という文言を削除しました。

 改正案が、現行憲法の条文から「公共の福祉に反しない限り」という文言を削除しているのは、22条1項だけである。

 どこに住むのも、どこに移動するのも、どんな仕事をするのも全くフリーだ、というのである。

 これは、グローバル資本主義による一握りの富裕層を擁護して、国民国家は滅びてもかまわない、ということを意味している。

7 改正

 現行憲法96条は「この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承諾を経なければならない。」と規定している。

 これに対して、改正案は、国会の発議の要件を「過半数の賛成」足りるとして、要件を緩めて改正しやすくしている。

 これは「国のあるべきかたち」はその都度の統治者や市場の都合でどんどん変えればいい、という考えに基づくものである。

8 憲法尊重擁護義務

 現行憲法99条は「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と規定している。

 憲法は権力を制限するものだから当然の規定である。

 ところが、改正案102条1項は「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。」と規定している。

 これは、この憲法は国民の権利と自由のために起草されたものではない、ということを示している。

 また、改正案102条2項は、憲法を擁護する義務を負う者から「天皇及び摂政」を削除しています。

 これは、天皇が憲法ではなく、統治者に従うことを求めているといえる。

9 緊急事態

 改正草案第9章「緊急事態」は現行憲法にはない条項である。

 まず、改正草案98条1項は、内閣総理大臣が緊急事態の宣言を発することができる要件のひとつとして「内乱等による社会秩序の混乱」をあげている。

 この「等」はあらゆる場合を含むので、権力者が「社会秩序の混乱」だと言えば、フリーで緊急事態を宣言できることになる。

 つぎに、改正草案98条2項は「緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。」と規定している。

 国会の承認は「事後」でいいということである。

 さらに、改正草案99条1項は「緊急事態の宣言が発せられたときは・・・内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる」と規定している。

 これは、国民の権利や自由を内閣だけで制限することができることを意味している。

 加えて、改正草案99条4項は「緊急事態の宣言が発せられた場合においては・・・両議院の議員の任期・・・の特例を設けることができる。」と規定している。

 

 これによって、国会議員は統治者を支持する者に固定されるので、緊急事態を宣言した統治者は無期限に権力を行使できることになる。