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北星学園での講演(第12回) ☆ あさもりのりひこ No.436

沈みかかっている船の中でお互いの顔を見ていて、「何も変わっていない」と思っているけれど、実は船自体が沈んでいる。

 

 

2017年8月31日の内田樹さんのテクスト「北星学園での講演」を紹介する。

どおぞ。

 

 

学位工場のことはご存じない方でも、株式会社立大学のことは覚えていると思います。2003年度、小泉政権のときに、例の「構造改革特区」に限っては学校法人ではない事業者が学校を設立できることになりました。そして民間企業が続々と大学経営に参画してきた。ビジネスマンが大学を経営するとどうなるかということのこれが見本ですね。2004年から株式会社立大学が次々と新設されましたが、WAO大学院大学とTAC大学は申請に不備があって却下、LCA大学院大学は三年で募集停止、LECリーガルマインド大学は全国に14キャンパスを展開しましたけれど、2009年に学部が募集停止。サイバー大学はすべての授業をネットで配信するので「一度も大学に登校せずに卒業できます」という触れ込みでしたけれど、レポートを出してくる学生の本人確認ができないのでさすがに文科省からクレームがつきました。その世界遺産学部というユニークな学部は2010年に募集停止。

小泉純一郎、竹中平蔵が行った規制緩和の中で出て来た話です。学校教育を学校法人だけにやらせるのはけしからん、と。ビジネスマンが参入できる仕組みを作れば、産業界のニーズにぴったりあった人材育成の仕組みができるに違いないと自慢げに始めたわけですけれど、結果はどうなったのか。株式会社立大学が志願者確保に大成功し、卒業生は引く手あまたというような話はどこからも聞きません。でも、当たり前なんですよね。どれほど「実学」重視と言っても、ビジネスマンがやる以上、経営努力の最優先項目は「教育にかけるコストを最少化すること」になる他ないんですから。経営努力がまず「いかに教育をしないか」の工夫に向けられるようなところが教育機関として機能するはずがない。今でも「実社会でビジネスの経験をした人間をつれてくれば、世間知らずの大学教員なんかには真似のできない実学教育ができる」というようなことを言う人がいますけれど、そういう人たちに「では、株式会社立大学はなぜ失敗したのか」、その理由をきちんと説明して欲しいと思います。でも、「ビジネスマンに学校教育をやらせれば大成功する」と主張する人たちの誰一人「株式会社立大学の末路」については言及しない。それはもう「なかったこと」になっているらしい。

大学教育の劣化は深刻な事態ですけれど、大学人自身が大学教育が劣化しているという事実を直視していないことが最大の問題です。それがどういう歴史的経緯で出て来たものかということを検証していない。だから、どうすれば大学の生産力を回復できるかという議論が始まらない。

でも、なかなか気がつかないんです。日本の大学だけ見ていると。「何か最近の学生は活気がないね」とか、「最近の学生は漢字が読めない」とか「英語ができない」とか言っているだけです。でも、「どこでもそうだよ」と教えられると、納得してしまう。あのですね、それは日本の大学ばかりが地盤沈下しているということなんです。沈みかかっている船の中でお互いの顔を見ていて、「何も変わっていない」と思っているけれど、実は船自体が沈んでいる。

 

だから、今、政治家とか財界人とかは、もう自分の子どもを日本の学校にやらないでしょう。中等教育から海外ですよ。スイスの寄宿舎とか、ニューイングランドとか。