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内田樹さんの「政局についてのインタビュー」(後編) ☆ あさもりのりひこ No.1013

「政策の整合性なんてどうだっていい。とにかく政権与党でいたい」というのが自民党の偽らざる本音なんです。自民党は歴史的に見ても、政策的一貫性なんかまったくない政党です。

 

 

2021年5月7日の内田樹さんの論考「政局についてのインタビュー」(後編)をご紹介する。

どおぞ。

 

 

― 衆議院の解散は秋というのが永田町筋からも聞こえてくる情報ですが。

 

内田 僕の予測は解散のタイミングが見つからないままずるずると任期満了までゆく、ですね。

 

― では総選挙前に自民党総裁が入れ替わるという?

 

内田 総裁の看板は選挙前に付け替えざるを得ないでしょう。それが自民党の得意技なんですから。安倍再登板だってあり得ますよ。

 

― 私もそう思ったんです。岸田さんじゃ無理だし、安倍再登板ぐらいしかないんです。

 

内田 安倍さんは菅さんや岸田さんより「運が良さそう」に見えますからね。第二次政権だって、検察がしっかり仕事をしていたら、公民権停止は当然で、逮捕投獄だってあり得たはずなのに、病気だと言って世論の同情をかき集めて逃げ切った。2012年の総裁選も、石原幹事長が出馬して、谷垣総裁が降りたせいで、漁夫の利を得て浮かび上がった。それも第一回投票では石破にダブルスコアで負けていたのに、第二回で蘇った。そのあたりの「悪運の強さ」については自民党国会議員団には期するところがあるんじゃないかな。

 

― そうですね。二回とも病み上がりでまた復活することもあり得ますね。

 

内田 病気だという割には診断書も見せなかったしね。そういうふうに全部放り出して逃げ出すタイミングの見はからい方を含めて、安倍さんの状況を見る目はなかなかのものですよ。

 

― 岸田さんが本当は順当だったはずなんですけど、とてもじゃないけど、勝負弱いしこの前の選挙であんなことになってしまったという。しかし、総裁候補のタマがいなさすぎますね。

 

内田 石破さんはもう無理だと思う。2012年の総裁選のときが勢いのピークでしたけれど、その「波」に乗れなかった。そういうのは、政治的実力というよりは「運」なんです。でも、運に恵まれなかった。他の候補者というと...稲田朋美や野田聖子も党内に安定した支持基盤がないでしょう。

 

― 全然、派閥基盤がないですよ。二階さんはロートルすぎるし。

 

内田 河野太郎も人望ないし。消去法だと、「当落線上ぎりぎりなので、とにかく議席を守りたい」という力のない議員たちに担がれて安倍再々登板というのはあり得ますよ。

 

― 第三次安倍政権ですか。

 

内田 可能性としてはあり得ると思う。そして、その場合には、はっきり「極右」の公約を掲げて登場すると思います。「民主主義はもうダメだ。中国を見よ、ロシアを見よ、トルコを見よ!」と。強権的・独裁的な政体の方が効率的だし、国際社会でも恐れられるのだと言い切れば、それを歓迎する国民はかなりいますよ。

 

― そこまで右翼で行くでしょうか?

 

内田 そこまで右傾化したら、もう国民の過半の支持を得るのは無理ですけれども、それでもそこまで極端になることが「選挙で一番負け幅が少ない」と見切ったら、やるでしょう。現に安倍さんは過去6回選挙に勝ってるんだから。

 安倍さんがそこから得た経験則は「国民を分断して、現政権を支持する国民の利害のみを配慮する」というネポティズム政治をしている方が選挙には勝てるということだった。ふつうの為政者は国民の統合を目指すものですけれど、別に国民全体の支持は要らない。選挙に勝って国会の相対多数を制すればいいというだけなら、国民を分断して、政権に盾突く者にはつねに「ゼロ回答」で応じる方が効果的なんです。支持者の利害だけを配慮し、自分を支持しない有権者には「何もやらない」ということを続けていると、野党支持の有権者はしだいに無力感に蝕まれて、政治に絶望するようになって、投票に行かなくなる。投票するのが与党支持者だけになれば、そりゃ選挙には勝ち続けますよ。

 

― 今の世の中、「何処も腐っているんだから、腐っているところに食い込むしかない」と言ったある新聞記者がいますがどうでしょう?

 

内田 腐っているところに食い込んだら、本人も腐るだけですよ。

 

― しかし、今の立憲民主党、国民民主党、日本共産党では、外交安全保障等の政策の違いもございますし。

 

内田 そんなのどうでもいいんじゃないですか。だって、昔は「自社さ連立政権」なんてものがあったんですよ。自民党と社会党が連立を組んだんですよ。「政策の整合性なんてどうだっていい。とにかく政権与党でいたい」というのが自民党の偽らざる本音なんです。自民党は歴史的に見ても、政策的一貫性なんかまったくない政党です。そういう与党については文句を言わないで、野党に対してだけは「政権交代したいなら全野党の政策を一致させるべきだ」と言うのは、メディアの側のダブルスタンダードですよ。全野党の政策のすり合わせが終わるまで、政権交代を求めるべきではないなんていうルールを誰が決めたんです。そんなルールを認めたら、自民党の永久政権が続くだけじゃないですか。

 

― 連合が色々言ってきますし・・・。共産党との連立には。

 

内田 連合なんてもう要らないと思いますよ。政策協定するにしても、ざっとでいいと思う。それよりも一日もはやく政権交代を実現しないと日本は終わります。

 

 とりあえず政権交代したら、いいことが一つだけあります。メディアは新政権をめちゃくちゃに叩くでしょう? 当然、連合政権内部では足並みがそろわないから、政府部内から情報だってどんどんリークされる。だから、政権交代すれば、政策決定プロセスについてきわめて透明性の高い政府が出現することは間違いない。「報道の自由度ランキング」ではたちまち世界ベストテンに入りますよ。その一事が実現できるだけでも政権交代する甲斐はあると僕は思いますけどね。