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内田樹さんの「改憲について」(前編) ☆ あさもりのりひこ No.1837

内閣総理大臣の主観に基づいて緊急事態宣言はいつでも発出できるということです。

 

緊急事態宣言は永久に延長できます。

 

 

2026年2月23日の内田樹さんの論考「改憲について」(前編)をご紹介する。

どおぞ。

 

 

 読者の方からこんなメールをもらった。質問へのお答えはブログに公開しますとご返事をした。

こんな質問である。

 

 質問(1):現在公開されている自民党の改憲草案(2012年作成)は、このままではとても大多数の国民が賛同するとは思えない酷い代物です。果たして、これをそのまま国民投票の材料として使ってくるのでしょうか。

 ひとつのケースとして、国民投票向けに口当たり良くソフトに書き直した草案を提示してくることも考えられます。その場合、文言に解釈変更の余地を残すとか、何か抜け道を用意しておいて事後的に文言を再修正するとか、あるいは我々の想像を超えるような悪辣な手を使ってこないとも限りません。現時点では予測の話でしかありませんが、この草案の問題について、先生はどうお考えになりますか。

 

 自民党の改憲草案をそのまま国民投票にかけるとは僕も思いません。おそらく九条二項の廃止と自衛隊の明記と緊急事態条項の追加が改憲のポイントになると思います。

 その中では緊急事態条項が一番重要で、これが憲法に追加されると法的に独裁制が基礎づけられます。これは全権委任法です。

 緊急事態条項についてはこれまで何度も書いてきていますけれど、問題点を再度指摘しておきます。

 草案によれば、内閣総理大臣は「外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害」に際して緊急事態の宣言を発することができます。

 問題は「内乱等による社会秩序の混乱」の「等」です。ここには何でも入れることができます。何を以て「社会秩序の混乱」であるかを規定する客観的な条件が書かれていません。ですから、内閣総理大臣の主観に基づいて緊急事態宣言はいつでも発出できるということです。

 緊急事態が宣言されると、憲法は事実上停止され、内閣の定める政令が法律に代わります。「閣議決定」がそのまま法律となる。衆院選挙は行われないので議員たちは緊急事態宣言下では「終身議員」となります。ですから、もし発令時点で与党が過半数を占めていれば、国会が100日ごとに宣言の延長を議決する限り、緊急事態宣言は永久に延長できます。

 そのような宣言の無制限の延長は不当であるという国民の声は議会外でのデモやストで表示するしかありませんが、まさにそのような異議申し立てそのものが「社会秩序の混乱」であるのだとしたら、それは緊急事態宣言の正当性を根拠づけるものでしかありません。

 緊急事態宣言はそのような出口のないループに日本国民を閉じ込めるための法的装置です。

 この条項をとくに「自然災害」の焦点を合わせたかたちで、改憲の文言に紛れ込ませるということはあると思います。

 

 ただ、2012年の自民党改憲草案は、自民党が日本をどういう国にしたいのか、まことに正直に書いてありますし、いまもネット上で公開されています。その点では「フェア」だと思います。ほんとうに「悪辣」なら、こんなものとっくに削除しているはずですから。